ギターのオーダーメイドを通じて | 後編-ギターとはそもそも何なのか

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著者:Isaku
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前回の記事(中編)ではオーダーメイドギターの経緯と製作工程について書きました。

Infinite Tradベースのオーダーメイドギターの概要とスペックについては前編を参照ください。

既成概念の呪縛

以前にSGのネックのリシェイプをお願いしたことがあります。

これはナット幅を40mmに変更するといういわゆるナローネックへの改造でしたが、実際のところアンプから出る音は殆ど変わっていません。
というよりも、変わったところで悪くならなければ問題はありません。

アコースティックギターであればマテリアルの些細な変化が生音に現れてしまうので、厳しい条件となります。
しかしエレクトリックの場合は弦の振動以外は気にする必要はなく、最終的にアンプから出力される音さえ評価すればよいため、より自由度の高いカスタマイズができます。

私も学生の頃は、非常に重たいレスポールにアコースティックギターのような弦高と011~049の弦を張ったセッティングで頑張っていました。
しかしそれらは苦労の割に殆ど意味がないということを後で知るのでした。

サウンドはどうやって決定される?

ギターのサウンドは各要素の集合体のように作られます。
大きな影響を持つのはピックアップ、アンプ、ジョイント方法、ブリッジ等になるでしょう。

木材も生音には大きく影響しますが、ピックアップが拾う音に与える影響はそれよりかなり小さいでしょう。

こちらでは木材による弦振動音(ピックアップ)の変化を確認することが出来ます。

重いギターから低い音が出やすいのは、弦の振動を消費させにくいためと思われます。
ストロークした時、軽いボディであるほどよく振動し、特に低周波は重い物質でないと止めにくいです。

同様にスタインバーガーのようにボディの振動が少ないギターはサスティーンが伸びやすい傾向にあります。

しかし実際のところ、完全にフラットでロングサスティーンなギターよりも、ある程度ボディやネックでエネルギーを消費させたほうが美味しい音になると感じる人が多いでしょう。
引き算の要領で出音を考える事ができるというわけです。

量産品と手工品

「工場で大量生産された安価なもの」と、「工房で手を掛けて作られた高価なもの」–
なんとなく前者は品質が悪く後者は良いというイメージがあると思いますが、実際のところはどうでしょうか。

スクワイヤーはなんと1万円台で購入できますが、実際に弾いたことがある人はそのクオリティに驚いたのではないでしょうか。
20年前の安物のギターは楽器というよりもまるで家具のような印象で、加工の精度も良くありませんでした。
しかし最近のものはなかなかよくできていて、そこそこのクオリティを持っています。

なぜそうなるのか。
楽器ではないのですが、以前にオリジナル食品の開発企画があり、加工会社さんに生産の見積もりを取って頂いたことがありました。

工場で生産する場合、1つあたりの費用は生産量によってかなり大きく変わります。なんとロットによって10倍の差ができてしまいました。
もちろん品質はどちらも同じです。

産業革命以降、たくさん作って多くの人に売ることで、高いクオリティの製品が安く手に入るようになったのです。
また多く作ることでノウハウが蓄積され、さらなるクオリティアップに繋げることもできます。
これは資本力のある企業にしかできないことで、またその企業努力も相当なものとなります。

このように大量生産品だからといって侮ることはできません。
もちろん楽器は加工食品とは違い職人技術が必須となりますが、ベースとなる部分は大量生産で作り、大事な箇所は職人さんの手を入れることで効率化を図ることもできます。
対してKieselのようにオーダーメイドでも量産体制を整えることで効率化を図り、コストカットが出来ているケースもあります。

楽器の価格は企業の資本力や方針によって変わるため、必ずしもイコール品質とはなりません。
長々と書いてしまいましたが「イメージや価格はあくまで指標の一つ」として捉えるのがよいでしょう。

カスタムショップの方がミドル~ボトムが太くマイルドでリッチなサウンドに聴こえます。
しかし音だけ評価すると150ドルと3500ドルほどの差は無いように感じられます。
もしスクワイヤーのギターのピックアップと配線だけ交換したら…ついでにフレットとペグも交換したら…なかなか恐ろしいことです。

プレイアビリティ

と言ってもこれらの価値の差はヘッドロゴのデカールの違いだけではありません。
手間ひま掛けて作られたギターは加工の精度が高く弾きやすく感じることが多いです。
精度の低いものはミニチュアのギターをそのまま大きくしたかのような雑さがあります。

しかし安いギターでも手を掛けることで弾きやすくできる場合があります。
フレットを交換し、フレットやネックのエッジ部分を滑らかにしたり、またネックの反りと弦高をきちんと調整することで劇的に変わる場合も。

せっかくのオーダーギターについての記事なのに大量生産品のいいところばかり書いてしまいました(´Д`)
ただ、ONIBAMIはトムアンダーソンなどのカスタムショップによるハイエンドギターと比べても、全く遜色のないクオリティに感じられます。

エレキギターは伝統楽器か

三味線やバイオリンを弾いたことがある人は分かると思いますが、昔の楽器はエレキギターやベースほど人間工学的な配慮がされていません。
(それでも完璧にピッチを合わせてしまう奏者には脱帽してしまいます)

対してエレキギターの歴史は新しく、比較的機能性が重視された自由な楽器ではありますが、なんの束縛も受けないものではありません。
世の中に多く溢れているエレキギターを思い出してみれば、多くがフェンダーやギブソンのものだと気づくはずです。

そして、多くの人がイメージし求めるのはそういったトラディショナルなギターです。
フェンダーのブロードキャスターが登場してから幾十の時が流れましたが、エレキギターは大して進化しておらず、また進化が求められることもありませんでした。
例えサウンドが全く同じであったとしても、ブランド的な付加価値によって新しく便利なものより古く扱いづらいものが選ばれるのです。

そうやって伝統楽器に片足を突っ込んだギターですが、完全にはまりきった訳でもありません。

ONIBAMIも見た目こそトラディショナルですが、プレイアビリティや使い勝手は完全に別物です。

ロック式のペグやバズフェイトンチューニングシステム、Fluence Modernのような多様な音が出せるピックアップ、ブラインドテストをしてもチューブアンプと聴き分けが難しいシミュレータなど、伝統楽器の体を保ちつつも新しい技術が登場し続けており、トラディショナルに拘り続ける層とはまた別の層へのニーズが生まれています。

そうやって変化が続いている事がエレキギターの面白いところなのかもしれません。

Playthrough動画

動画を投稿しました 🙂 

そして

そして…現在ONIBAMIの初号機の製作も依頼中です。(今回のは零号機)
ONIBAMIの別のバリエーションでありつつ、細かい部分のブラッシュアップも図っています。

追記:初号機が完成しました。
【Infiniteギター】オーダーメイド第二弾 Trad JM TATARA 前編

リンク

ハイエンドミュージックのギターブランド: Infinite(インフィニット)
今回製作のギターようなTradシリーズやオリジナルシェイプのModernizeシリーズが展開されるとの事。