伝わる言葉に“文章力”はいらない ベテランコピーライターの誰も教えてくれなかった文章術
- 著者:
- 宮澤 節夫
- 出版社:
- SBクリエイティブ
プロの頭の中をメソッド化、2時間で文章が変わるツールを初公開!「9マス」で必ず伝わる文章が書ける。当てはめて書くだけで、“ササる”文章がつくれる!センスも経験もいらない文章講座。
近年私が遭遇した技術分野において、人生に大きく影響を与えるレベルで良かったものが4つあります。
- 人間工学として使う心理学(メンタルハック)
- グロースハック
- 広告コピーライティング
- 文章ライティング
この本は最後の「文章ライティング」を扱うものとなりますが、これは広告やビジネス以外の分野でも役に立ちます。
例えば、友達にハングアウトを送るときにでも使えます。
本を読みながらメモを書きました。
早速見ていきましょう。
目次
メモ書き
“広告ライターになったとき「読み手を動かす文章を書け」と言われた”
“文章は、読み手を動かさなければ意味がない。”
誰に向かって文章を書いているのか
文章も会話も、コミュニケーションの一つ。
ただ、文章は一方通行になりやすい。
誰に向かって文章を書くのかを意識する必要がある。
期待する反応を得るためにきれいな文章は必要か
「書く」事が目的ではなく、「相手にこちらが思うように動いてもらう」事が目的になる。
つまり、そのためなら何をしても良い。
営業レターやプレスリリース、打ち合わせの連絡であろうと、その文章で相手から期待通りの反応を得られなければ成り立たない。
キレイな文だけでがなかなか人の心は動かない。
人の気持ちを動かすには、相手の気持を掴み、心をこちらに寄せてくれる策=上手な説得が必要になる。
だから我々の文章に必要なのは「文章力」ではなく、「相手の気持を想像する力」「相手に納得してもらう力」である。
多くの人は文章を読みたくない
多くの文章は読まれていない。
現実には待ちに待った良い知らせなどめったに無い。
文章にできるのは、読み手の頭の中を変えること
文章は直接的に行動を起こさせることはできない。
文章ができることは、読み手を「その気にさせる」ことだけ。
× 良い文章を書けば必ず人は動いてくれる
○ 文章にできるのは、行動につながる「心理」をつくること
文章は万能ではなく、書けば期待通りになると思ってはいかん。
期待通りに動いてもらうには読み手にどんな刺激を与えたらいいのか、徹底的に考える必要がある。
相手は自分にとって価値があると感じるものにしか興味を持たない
読んでもらうためには、相手にとって重要なこと、価値があることを知らせないといかん。
「重要なこと、価値があること」は人によって違う。
テキストの装飾も大事
実際に出力されるテキストの装飾についても、大事な要素。
行間の幅やフォントのサイズをよく見て、全体の印象や可読性についてチェックしてみよう。
「9マス」で伝えたいことを整理する。
※引用元「伝わる言葉に“文章力”はいらない: ベテランコピーライターの誰も教えてくれなかった文章術」
「目的」と「相手の頭に残したいこと」を軸に文章を作る。
メモ書きまとめ
-
- 文章は、読み手を動かさなければ意味がない。
- そのためには、「読み手を知ること」「文章の目的の設定」が必要。
- 「9マスの表」を使って文章を組み立てる。
- その表は「相手の頭に残したいこと」「目的」を軸に決める
- 読み手を動かす方法に決まりはない
・・・
長くなってしまいました。
全体を通して「読み手に伝えるためには、読み手を動かすためには、どうしたらいいか考えよう」という内容になっています。
また、「文章力はいらない」と言いつつも、後半は語彙力を高める方法など、基本的な文章の組み立て方法にも触れられています。
現代文が得意な人は飛ばしてしまって良いでしょう。
↓から感想文です。
エンジニアは「事実」を大事にし、
ライターは「読み手」を大事にする
私は技術職に身を置いているので、こういった広告業の方が作るものに欺瞞を感じることもあるし、「好きではないな」と思うこともあります。
例えば広告コピー。
ただの水を「真夏の常備水」と銘打つ(タグライン)ことにより、莫大な利益を得ることが出来てしまいます。
「格安スマホ」なども、売り手の都合により付加価値を付けるために作られたコピーライトです。
もっと不誠実な例は「(食べたカロリー)なかったことに」などのサプリメントで、薬事法スレスレの表現で消費者を誤導しています。
これらのコピーは、Googleなどの「実を取る」テクノロジー企業の台頭により(今や時価総額ランキングの上位はIT企業が独占しています)追いやられつつあるものの、まだまだ市場に出てきます。
エンジニア的文章は読みづらい?
しかし、実直なエンジニアが作る文章が読みづらいと思っている人も多いでしょう。
技術者が業務のために作る文章は、読み手によって解釈が変わってはいけないため、事実を大事にする必要があります。
例えばCMS(ブログ)ツールのワードプレスの規格書を見てみましょう。
技術者以外の人は拒否反応を示すかもしれません。
またグーグルの要人たちが書いたビジネス書「How Google Works」も非常に有益な本ですが、291ページもありとても読みづらいです。
各省庁のWEBサイトが見づらいのも、なるべく読み手の解釈の種類を増やさないためです。
(それだけでも無さそうですけどね)
ライター的文章は読みやすい
対して、ライターの方が作る文章は多くの人にとってスッと入ってきます。
この本も簡潔で、非常に読みやすいです。
なぜかというと、ライターは文章で成果を出す必要があるからです。
「読み手に与える影響」を何よりも大事にしているのです。
読み手によって解釈が変わっても構いません。
それよりも「読まれないこと」「読まれても何の影響も現れないこと」を避けなければならないのです。
エンジニアがしっかり書いた仕様書が読みづらいからと言っても、それで問題が起きたらそれは読み手の責任です。
しかしライターが書いた広告コピーが如何に事実に誠実でも、読みづらく商品が売れなければそのライターに次の仕事はありません。
この本は何度もの内容の重複が見受けられました。
これは仕様書ではご法度ですが、まさに「読み手に与える影響」を重視した結果と言えます。
また、文章以外の制作物にも応用できそうです。
「目的」と「相手の頭に残したいこと」を軸にディレクションしてみましょう。
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
この本を読んだとき、真っ先に思い出したのが京都アニメーションの代筆屋の物語「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」でした。
個人的には「クラナド」時代を思い起こさせるような大げさな演出や、突飛なキャラクター設定は苦手なのですが、(「たまこ」や「聲の形」のようなあっさり加減が好き)この作品はそれよりもまさに「文章の役割」を描いていると思うのです。
主人公は非常に優秀な退役軍人ですが、物語初期に彼女が書く手紙はまるで報告書のようで、読み手に伝えたいことを伝えることが出来ません。
しかしその報告書もまた、エンジニア的であり「事実」に対してとても誠実なのです。
多くの人はその滑稽さに笑うかもしれませんが、読みづらい文章にもたまには目を向けてあげてください。